1 ボランティアとは何か

(1)ボランティアの語源と意味
   Volunteerという言葉は、ラテン語のVolo(意志する)が起源とされ、Voloは英語のWillに相当する
  言葉である。このVoloから自由意志を表すVoluntasという言葉が生まれた。これに人称を表す
  -erをつけてでき上がったのがVolunteerである。
   ボランティアを「奉仕」という言葉で置き換えることができない意味を含んでいる。このため、
  ボランティアという言葉の意味を考えてみることにする。

Volunteer               新クラウン英和辞典第4版(三省堂)
名 詞
@自ら進んである任務につくことを申し出る人、無給奉仕者、篤志家、有志
A志願兵、義勇兵
動 詞
@自発的に申し出る 、自ら進んでしようと言う、進んで提供する。
A志願する、志願兵になる。
   決して、他人から強制されるものではなく自発性が重んじられる活動である。この点で、奉仕という
  言葉は、奉(たてまつ)る、仕(つか)えるという意味があり、ボランティアとは相反する意味合いがある。
   言うならば、自由な立場で市民参加する活動がボランティアである。

(2)ボランティアが活躍する時代 = 社会貢献の時代
   生きているだけでよい時代は過ぎ去り、生活の質(Quality of Life=QOL)の向上を求める時代に
  入っている。豊かな生活とはどんなものか、自分も社会の中で、いきいきとした人生を送りたいと
  考えるようになってきた。それは、ガン患者への対応の仕方に色濃いく表れている。ガン細胞の除去
  手術によって時間的に長く生きれたとしても、苦痛の毎日であるなら、手術を受けないという選択肢
  もある。
   後述のように病院でもボランティアが活躍する時代にもなり、自分の時間を割いてでも活躍したいと
  考える人も多く存在する。社会貢献で自分の存在感を感じとれる活動、それがボランティアで
  あったりする。

 (3)ボランティアとしての質的向上を目指して
   自発性があり取り組んでいる活動であっても、月日が経つにしたがって変質することも有り得る
  ものである。それを防ぐには、自らが向上心を持ち、年齢的な上や下に関係なく誰からでも学ぶ
  姿勢を持ち、謙虚に自己研鑽に努めることが求められる。


2 医療機関におけるボランティア活動
 医療施設で行われているボランティア活動は、園芸セラピーを行ううえで参考となるものである。
 (1)病院ボランティアと、その内容
   ア 病院ボランティアとは
     病院ボランティアとは、医療従事者と協力して、患者にとってよりよい環境の中で、安心して治療が
    受けられるように、患者等に自発的にサービスを提供する人のことである。
     初めての病院に急な入院をした時ほど、私達にとって、はじめての人とのコミュニケーションが
    難しい事を痛感させるものはないでしょう。「気心の知れた仲」という言い方があるように、人間関係が
    できている医療従事者か、できていない医療従事者かは、不安に思っていること、困っていること、
    戸惑っていることについての聞きやすさは計り知れない違いとなって表れる。
     そこに、その病院をよく知っている元入院患者は、新しい患者によって心強い存在と成り得る
    のである。また、2人以上の子供を連れてくる親にとって、子供の世話をしてくれるボランティアの存在が
    ありがたいものである。正に、遠くの親戚より近くの隣人である。
   イ ボランティアの内容
    (ア)生活を豊かにする支援
     話し相手、本の読み聞かせ、子供の遊び相手、図書の貸し出し、園芸等
    (イ)病院の開放、市民参加活動
     案内、受付、代筆、通訳、手話通訳、子守、裁縫、衛生材料づくりなど
    (ウ)身辺雑事の補助活動
     病院の整頓、買い物の手伝い、花の水換えなど
    (エ)介護の補助活動
     食事介助補助、院内移動補助、入浴介助補助、配膳の手伝い、乗降時の援助など

 (2)病院訪問ボランティアと、その内容
   ア はじめに
     ボディーイメージを傷つけるような治療(手術)を受ける患者は、その治療を受け入れることが
    できにくいことがある。例えば、乳がんや結腸がん等の患者である。術後の生活が不安となる
    患者に、先輩である患者が病院の指揮権のもとで患者に対面し、術後のイメージつかめるように
    援助する活動を病院訪問ボランティアという。
     QOLが言われて久しいが、それが当たり前となっている欧米、オセアニア等で盛んに
    行われている活動である。
   イ あけぼの会(乳がん患者の会)の活動
    (ア)ボランティア活動
      会の目的の一つに、ボランティア活動があり、次のように書かれている。“将来は会員から
     ボランティアを養成し、手術後、社会復帰に対する不安、焦りがみられる患者のために手助けを
     する。ボランティアは患者と病院からの要請があれば出向いて、話を聞き、自分の体験に
     基づいて、勇気づけたりアドバイスをしたりする。”
    (イ)テレサ・ラッサー賞を受賞したABCSS(Akebonokai Breast Cancer Support Service)
      患者と病院の要請により入院中の患者を訪問し、悩みや質問に体験者として答え精神的な
     ケアを行っている。
     ・乳がん手術前後の患者の不安を軽くし、様々な疑問に答える。
     ・体験者にしか分からない悩みや不安を分かち合い、退院後の社会復帰に役立つ情報を提供する。
     ・立ち直った実例として自分を見てもらう。
   ウ 社団法人日本オストミー協会(オストメイトの会)
    (ア)事業の一つとして、オストミービジターの養成・派遣
     オストミービジター養成講座修了者による活動を行っている。
    (イ)オストミービジター(OV)制度
      ストーマの造設を告知されたとき、だれでもそのショックは大きく、「現実から逃げたい」「そんなに
     なりたくない・それならいっそのこと・・・・」と考えたりする。手術の後も「こんなことで生活できる
     のだろうか」とか「職場に復帰できるのだろうか」との苦悩がある。オストミービジターは、オストメイト
     になろうとしている人、新たになった人の動揺や不安が少しでも軽くなるように、悩みを聞いたり、
     相談に乗ったりすることを目的にしたボランティアである。オストミービジターは、いずれも術後
     数年経ち、ストーマと上手につき合いながら社会復帰を遂げた者である。
    (ウ)訪問活動
       人間関係のできているオストメイトが手術した病院の医療関係者の要請で訪問する場合が
     大半である。


3 医療・福祉施設での留意点

 (1)医療福祉関係者の指揮権のもとで行う活動である。
    医療福祉関係者の要請があってはじめて、施設での園芸活動が行えるものである。クライアント
   (患者・入所者)とのコミュニケーションだけでなく、医療福祉従事者、そして園芸療法士、
   園芸ボランティア間の密な連携のもとで成り立つものであるので、クライアントが求めるものはないか、
   医療福祉関係者が何を求めているのか、充分把握する必要がある。

 (2)守秘義務
    施設に出入りするボランティアだからといって、クライアントの情報をみだりに漏らしてよい訳では
   ないので、十分配慮する必要がある。

 (3)させていただく活動、与える喜び
    クライアントと同じ目線で取り組むことが最低限必要で、指導して上げるといった姿勢では
   成り立たないものである。


4 園芸セラピーとボランティア

 (1)園芸セラピーの実践者
   ア 園芸療法士
   (ア)国内外で資格を取った園芸療法士が施設で雇用される形で園芸セラピーを行う。
      アメリカでは園芸セラピーが医療点数に反映されるので、園芸療法士が雇用される場合がある。
   (イ)国内外で資格を取った園芸療法がボランティアとして、又は非常勤講師として園芸セラピーを行う。
   イ 園芸ボランティア
      園芸に詳しい人がボランティアとして園芸セラピーを行う。
      仮に園芸療法士が居るにせよ、園芸ボランティアの存在は運営上重要な存在である。
      また、植物の日ごろの維持管理についても園芸ボランティアが必要である。

 (2)園芸セラピーの実践形態
   ア 作業療法士、園芸療法士、園芸ボランティアの協力体制で行う。
   イ 医師等の指導の下で、園芸療法士、園芸ボランティアの協力体制で行う。



《参考文献》


  特定非営利活動法人日本病院ボランティア協会Website
  富山赤十字病院Website
  北見赤十字病院Website
  『日々の暮らしとボランティア活動』第6版 巡静一著 1991.11大阪ボランティア協会
  新クラウン英和辞典第4版(三省堂)
  あけぼの会ABCSS資料
  『オストメイト福祉のしおり第1版(岡山県支部、平成6年2月1日発行)』