園芸療法ワークショップ

 
主催 : 財団法人日本緑化センター

日時 : 平成12年11月25日土曜日 10時00分〜17時25分

場所 : RCC文化センター(広島市)

講師 : ボディル・アナーヤ氏(メイン講師)
       ・園芸療法士(HTM)
       ・ニューヨーク州オールバニーで園芸療法の啓発活動、研究、療法士の育成、サービスの
        提供など国際的に活動するNPO(WAY TO GROW)を主催。
     グロッセ世津子氏
       ・園芸療法研究家。(有)みどりのゆび代表取締役。
       ・日本における園芸療法の普及をめざして全国各地での講演・執筆活動のほかに、
        園芸療法ネットワークを主宰。
     瀧邦夫氏
       ・(財)日本緑化センター勤務。1995年園芸セラピー研究会を発足し、事務局を担当。 
       ・東京農業大学・東北福祉大学非常勤講師
 
講義内容
 メモを基に一部を報告します。
(1)オランダ・イギリス園芸療法研究ツアー報告(瀧邦夫氏、グロッセ世津子氏)
  @我が国における園芸療法
  ・日本では1990年代に入って日本で普及
広島では、1997年のグリーンフェスタで普及活動
  ・人材の育成が課題である。
  A報告書を基に説明
  ・ガーデニングを通じて、自分を取り巻く世界と直接触れてほしい。
  ・視覚障害者に識別しやすくコントラストを出す。
    花壇は、机、イス等は赤・黄・青色で目立つように配慮している。
  ・視覚障害者の8割は、いくらかは見える。
    その生徒の方が見え方が様々で対応が難しい。
  ・テーブルセット等はユニバーサルデザインの考え方
    イスは車椅子の人用に、一部分イスを無くしている。
  ・ウォークマンの活用
    先生の植物の説明を聴けるようにして植物の勉強が出来るようにしている。
  ・作業用の花壇は、二人ペアで3uを担当する。
    これは、ひとりが居なくても植物の管理が出来るようにと、二人ペアにしている。
  ・施設内も、通路は道に見立てる。
    個室と廊下の間には窓があり、窓の通路側にはウインドウボックスがある。このボックスには
    花が飾れている。このように、普通の生活を施設内でも出来るようにしている。
  ・オランダでは、園芸療法とは言わず、適応する園芸と表現している。
    セラピーでは、指図という狭い関係を連想する。
     Horticultural Therapy ⇒Adapted Gardening ⇒ Adapted Green

(2)重度心身障害者・児と園芸療法(レクチャー)
  ・土を病院に持ち込む場合の留意点
    温 室・・・ピートモスやパーライトなど無菌の土を活用
(ソイルレス・ソイルという)
    テラス・・・普通の土を活用
  ・園芸療法中のセラピストの位置関係
    失った機能側に立つ
    絶えず本人に意識させる・・・自助道具も、失った機能方向に少しずらす
  ・痴呆
    かつて、その人がしていたこともしてもらう。
    季節や天候のことを話題にする。
    社会生活に戻すことが大切で、痴呆の方が何も出来ないと考えてはならない。
  ・グリーンハウス(温室)やガーデンのいい雰囲気が伝染
    外気に当たらなくとも部屋から直接行ける温室であること、出入口が広いこと
  ・出来ることに目を向ける
    上昇志向で、すべて肯定的に捉えること。患者を哀れんではいけない。
  ・フレンズ & フレンズ(強度の自閉症を父母の農場で癒す)
    そこに姉の友達の高校生がその癒しに関わる。今では週20名もの高校生が訪ねてくる。
植物を育てることによって、自分以外のものに責任を持てることが素晴らしい。

(3)改良道具のデモンストレーション(ボディル・アナーヤ氏)
  ・障害の前に、個性ある人間であることを大切にすること。
  ・一人ひとりに適した道具を作ること。
    よく観察することによって、想像力を働かせることが出来る。

(4)セラピストと障害者との園芸作業ロールプレイ(ボディル・アナーヤ氏)
  ・体験したビニール袋温室(植物:セントポーリア)
   《用意する物》
    (セントポーリア、用土、携帯用ジョウロ、ビニール袋、よく切れるハサミ、鋭利なメス、
     曲がるストロー、発根促進剤と器、新聞紙、アイマスク)
   《管理》
    (半日陰で管理、2週間ぐらいで発根)
   《葉脈がはっきりしている観葉植物》
    (葉挿しが可能。葉脈に切れ目を入れて発根促進剤(ルートン)を付け、用土に密着させ、
     U字ピンで密着を保つ方法もある。)

(5)質疑
  ・ハーブビネガー以外に、バザー用として作成しやすく、かつ販売しやすいものは??? 
    リース、ティーパック、ポプリ、苗の販売等
  ・精神障害者等、興味を持ってもらうことが大切(命令でなく)
    園芸という行為をすることが大切(結果ではない)
  ・見かけの悪い植物から使うとよい。ケアのし甲斐がある。
  ・愛が必要
    植物も人も必要。愛を与え受け取ることが大切。
  ・無視され続けることの方がダメージが大きい(暴力よりも)
  ・庭が核となって学ぶ場となる。
    もう喧嘩もしなくなる。
  ・人は、学ぶことに喜びを感じるものである。  
  ・グリーンハウス(温室)
    いくら寄付されてもアフターを考えたものでないと活用させない。
    外気に当たらなくても部屋から直接行ける温室であること、出入口が広いこと。
  ・発達障害の人への対応
    単純に3段階行程で作業・・・ペアで雇ってもらう
  ・実践の場の配慮
    パーゴラ等で日陰を作る。
    水たまりが出来ないように、排水溝を必ず設置。
    鳥を飼うのも良い方法だ。
  ・楽しい日々の積み重ね・・・癒していくもの・・・園芸療法
  ・軽い知的障害者には
    値札付け、会計も担当してもらう。彼らにやってもらう。彼らのためにやらないこと。
    ある能力を活用してもらう。彼らのセンスを生かしてアイデアを出してもらう。
    (個性を引き出す作品を制作)
 
(6)感想等
・欧州では、園芸は多くの人たちの趣味であり、そのような普通の生活に戻すという
 主旨が園芸療法にあるように感じた。
・アメリカの園芸療法は、セラピストとして雇用させる形のもので、医療現場の中に
 入っている感じがした。
・ある人は、園芸療法を“園芸福祉”と言い換えてもと言われていた。
 
    《参考文献》 案内状及び当日配布資料による