『園芸セラピー』研修報告


T 東京都立園芸高等学校
 
 (1)園芸療法
   ア 園芸療法を始めたきっかけ
    @園芸関係の新規進路開拓
    A園芸と福祉の接点を探っていた。・・・園芸の果たす役割の拡大と少子高齢化対応
   イ その実践の始まりと経過
    @必修クラブでの取り組みが興り
    A部活動に発展
    ・月に一回土曜日を活動日とし、大田区の特別養護老人ホームに、1時間かけて通っていた。
  ・その特養との関係づくりは顧問によるものである。
  ・時期により内容を変えている。
    暖かい時期は花壇を中心にし、寒い時期は室内でアレンジ等を行っている。
 B平成11年度より、課題研究でも取り組む
     ・世田谷区深沢デイホームでの園芸療法が始まったため、課題研究での取り組みが加わった。
  ・10名程度の生徒が課題研究で取り組みだした。
     ・生徒によっては、部活動とあわせて課題研究でも取り組む生徒がいる。
     ・実施は、水曜日の3・4校時であり、その時間内に移動を含んでいる。
     ・授業内容は、園芸療法の理論的な内容、花材準備、交流当日の手順等の計画である。
     ・福祉の道に進む生徒も現れている。
   ウ 施設との関係
 @施設としてのスタンスを明確にしてもらうこと
  ・他のデイホームからも園芸療法の依頼が来るが、多くの場合、ホームとしてのスタンスなり、
   年間の計画、資金面、
花壇等の施設面との詰めがほとんどなされていない場合が多い。
 A材料費
  ・花壇苗は園芸高校のものを使っていただくことが多い。(奉仕になりやすい)
  ・アレンジ等の材料は施設持ち
 B園芸療法と施設との連携学習の成立要件
  ・施設の年間計画と学校の年間計画の一致(調整を含む)
  ・1年間交流するだけの施設の花壇面積と施設の予算確保
  ・相互に補完する関係が理想
 (2)時代の要請、地域の要請にいかに応えるか
   ア 外部と遮断してやっていける時代ではない。
   イ 都立の農業高校も、学校再編整備計画の聖域になっていない。
   ウ 緑を育てることが好きな生徒を育てていることをプレゼンテーションすることが大切であり、待ちの
     姿勢ではだめである。つまり、どんな生徒を育成しているかプレゼンテーションする必要がある。
   エ 生徒は外部の方々と交流する中で、認められたり、感謝されることで自信を持つようになる。
   オ 都教育委員会以外の部局との連携も大切となっている。・・・緑化等
   カ 世田谷区との連携にも力を入れている。
    @菊花展
    A区広報誌への掲載(生徒を全面に出す)
   キ 青鳥養護学校と中学校を加えて、年間の継続交流
   ク 近くの小学校の農場見学等多数あり
 (3)農場
   ア 特別会計はない。収入は200万円程度。支出は別予算であり、園芸高校には年間約2000万円の
     中の一部が農場経営(実習指導)に当てられる。
   イ 農場の開放デー「バラ園」5月
   約1000人から最大2000人の来校者
生徒の発案で始まったものであり、皆ボランティアで準備。当日の運営に当たる。
 (4)特に、本校において生かせる点、参考になった点
    ア 園芸の福祉力・・・園芸の持つ底力・魅力を再認識する研修の旅であった。
     @福祉との接点探し
   大都会よりも数年は遅れるとしても、園芸と福祉の接点探しは時代の要請、地域の要請であると
  実感した。また、心の時代、生活の質の向上を求めている時代、ガーデニングがブームとなり、園芸療
  法も注目されていることがよく分かった。
   しかし、課題研究での取り組みということで、担当者の異動でその運営が危うくなる可能性を感じ
  た。また、生徒の目的意識の向上につながっているということで、農業クラブなど部活的な取り組みも参考になった。
 A施設との連携の取り方
   東京でさえ、施設の担当者は自分たちの施設にあった園芸療法のとらえ方が分かっていないことが
  多く、プランを持っていないことさえあることが分かり、連携上の留意点をつかむことができた。
イ 学校経営に必要な視点・・・取り組み姿勢を確認する研修であった。
   大都会の伝統と歴史のある農業高校でさえ、相当の危機感と、地域との連携を模索し進められている
  ことをお聞きし、精研高校の存在や今後の位置づけを改めて考えさせられた。
  しかも生徒を前面に出すようにつとめていることが分かった。
  ウ 園芸療法モデルガーデンの実際的な作り方
レイズドベット 幅60cm、高さ40、55、70cmの3段階、そして腰掛けられるようになっている。
腰を屈めて作業をする花壇 約100cm×150cm どの方向からも作業ができるスペース
ビオトープの設置


 
U ぐんまフラワーパーク
 
 (1)園芸療法
   ア 特養等の施設の視察が増えている。
    ・園芸療法のニーズが大きくなっていることを痛感しているという。
   イ フラワーパークにおいても、園芸療法に一層力を入れる計画
    @バリアフリー化
   ケアガーデンエリアが設けられており、ケアガーデンユニットやセンサリーガーデン「香りの散歩
  道」ができているだけでなく、園内の多くでバリアフリー化が行われている。
       厳しい県予算の中で、平成13年度にはケアルーム(大人のおむつ替え施設)の建設が
      決まっている。
    A平成12年度には、「ハーブと園芸療法展」を実施
    B他の施設・団体との連携
      群馬県内には、園芸療法の研修(見学)先が他に3施設あり、特に農事組合法人フラワービレッジ
     倉淵生産組合(近藤氏)は農事指導においてすべての施設に関わっている。
 (2)ケアガーデンユニット(モデルガーデン)の概要
   ア 第12回全国都市ちば緑化フェア(1995年)での出品作品である。
    @ケアガーデンだから優空間満喫!!というコンセプトで出品したケアガーデンユニット(企画:東邦
     レオ株式会社)
      都市緑化技術優秀賞他二賞を受賞し、それを閉会後にフラワーパークに
     移設したものである。
    A都市型福祉公園
      市街地の児童公園の活性化、病院、老健施設などの新しい屋上緑化の
     空間づくりが目的で提案されたものである。
    B高齢社会に対応した園芸施設
   イ 主な施設構成
    @面積63u
    A車椅子利用者専用立体花壇
      FRP製で、車椅子の方が花壇の下に足を入れられるように花壇の脚部が
     引っ込んでいる。
    Bセンサリーガーデン
      眼の不自由な人でも、五感、特に香りや味などで植物を感じられるよう
     センサリーガーデンがある。
    C休憩所(パーゴラ)には、専用のリフト
    D障害者対応型水飲み
      脚部は車椅子が入る構造で、周囲に取っ手も付いている。水飲みはプッシュタイプで、手洗いは
     レ
バータイプである。
    E杖使用者用ベンチ
      両サイドにパイプの手すり、手荷物が置けるサイドテーブル付き
    F樹木地下支持システム
      屋上での施工を主眼においているため、強風による倒木を防止するシステムを利用している。
 (3)香りの散歩道の概要
   ア 平成7年に造成されたもので、全長270m
   イ 遊歩道の両側に、草花や樹木が植栽されている。
   ウ 季節ごとに、香りを色彩が楽しめるように、モクレン、ライラック、コブシなどの香木樹木25種
      108本、ハーブ類53種4500株、宿根草20種2900株、コニファー8種210本が植えられている。
   エ 花壇は腰の高さくらいにしたセンサリーガーデンになっており、直接手で触れたり、香りや感触を
楽しめるようになっている。
 (4)その他、フラワーパークに関する事項
   ア 施設概要
    @単県事業
   平成元年度から平成4年度にかけて単県事業で造成(72億円)、(財)群馬フラワー協会に委託
  されている。
    A設置のねらい
      新しい農業振興の一施策として行われたもので、米・麦・養蚕から花卉にシフトさせることを狙っ
     ている。       
    B約18.4ha
   イ 特色
    @赤城山を借景し、パークタワーを中心にした段々滝(ガスケード)、列柱群、建物は温室を含め
      ピラミッド型で統一
    A花をテーマとした公園
      なだらかな傾斜地、丘陵地をうまく利用した農業公園
      植裁面積約100,000u(芝、約40,000u)
      樹木約14万本
      植え替え花壇6,000u 年6〜7回植え替え
      鑑賞温室5棟(ラン、熱帯花木、ベゴニア、サボテン、イベント温室)
        イベント温室は、年5回程度の植え替え・・・季節を早取りする温室
    B花と調和する流れや池を各エリアに配置
      段々滝、噴水付き池、水上ステージ等
    C自然とふれあいを楽しめる憩いの場
      冒険トンネル、木製連続遊具、ふわふわドーム、緑の迷路
    D各種団体の参加による展示会、イベント
    E平成12年度より「花と緑の学習館」を併設
パークの北に。旧農試花卉支場の施設の活用策として、一般県民への園芸相談等にあたる。
学校の先生も対象となっている。
       旧農試の温室等はフラワーパークのバックヤードとしてフルに活用されている。
   ウ 維持管理経費
     ・年間5〜6億円のうち、毎年3億円を県が負担している。
   エ 入園者対策
    @県からは、経営者感覚でやれ!!、入園者を増やすよう厳しく言われている。
       
職員の創意工夫が強く求められている。
    A毎週のように各種企画展を行っている。
       そのため、関係する団体と連携している。
    B入園料の季節料金制、年間パスポートの導入(平成12年11月実施)
11月〜3月:大人500円、4月〜10月大人700円
    Cさらなる入園料金制度の変更
教育なら群馬ということで、平成13年11月からは中学生以下は無料、高校生も教育活動なら
無料、その代わり65歳以上の高齢者は全額負担に変更予定である。(知事の指示、条例改正中)
    D地元の宮城村や地元の温泉とのタイアップ
       誰も行わない“花木の蒸かし(早く花を咲かせる)”による鉢づくりに取り組み、花桃まつりを
       平成11年度から実施
    E広告宣伝
待ってはいられないということで積極的に取り組んでいる。
    F入園者の構成
       半数は県内。残りの半数は近県から来られている。
    G乗合タクシーの運行
       1日5便。大胡駅(大胡町)からフラワーパークまでタクシー1700円のところは、乗合タク
      シーにより400円程度になる。
 (5)特に、本校において生かせる点、参考になった点
   ア 園芸療法のニーズ大。
    @特養等の施設の視察が増えている。
    A一方で、園芸療法の供給側の不足、不十分さを感じる。
        フラワーパークにおいても、ケアガーデン、温室を含めて、冬場の園芸療法の対応はできていない
       ことから、年間を通じての供給側の態勢整備が求められている。
    B園芸療法について、他の施設団体との横のつながりが大切である。
    C園芸分野の可能性を広げる手段になる。
      大衆に受け入れられやすく、国民全体を対象にできる園芸分野の話題である。
    D屋上緑化も含めたケアガーデンの取り組みが広がりつつあることが分かった。
        園芸分野が進むべき一方向を学ぶ研修であった。(需要を待つ姿勢でなく、国民の生活の質の向上
       にいかに貢献するかという視点で、打って出る姿勢を感じた。)  
        社会貢献できる態勢づくり、条件整備のための連携・協力が望まれる。
    Eケアーガーデンの施設・設備の構成を知ることができた。
   イ 入園者を増やそうと、工夫改善をするその意気込みの強さ、責任感を感じた。
   全職員経営者意識での取り組みということで、元気をもらいに行った研修であった。
   ウ 施設、植裁のメンテナンス
        40名の管理スタッフで管理されているが、テーマパークにとってお客様にはその苦労を感じさせ
       ないことが大切という。すばらしいメンテナンスであった。