演劇部 ステージ発表
あらすじ
某高校の入学式の日。
幼なじみの広瀬このみと共に屋上から新入生達の様子を眺めていた若槻和哉は、新入生歓迎のイベントの輪に交わらず、離れた場所でひとり寂しげに日記帳を見つめる少女・藤村美雪を見つける。
美雪に声をかける和也だがことごとくをはねつけられ、しかも現れた美雪の兄・雅人に「俺たちに関わるな」ときつく言い放たれてしまう。
その雅人の態度、藤村という名字から「藤村兄妹に関わると不幸に見舞われる」という噂を思い出したこのみはそれを和哉に伝えるが、和哉はそんな些末な噂話など取り合わない。
かたくなに心を閉ざし、決して笑顔を見せない美雪。そんな美雪の態度、入学式の日に彼女の兄が言った「感情を荒げるな」という言葉の意味が気になる和哉は、彼女の心からの笑顔を見ることを強く望み、毎日のように彼女のもとへと訪れる。
奔放な和哉に惹かれはじめる美雪だが、『感情を出せない理由』は彼女の本心をかたくなに束縛し続け………
舞台上演
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左:入学式当日。ひとりベンチに座る美雪と、屋上からそれを見つけた和哉・このみ。 中央:美雪に声を掛ける和哉。だが、美雪は彼を冷たくあしらう。このみが取り持とうとするが…… |
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左:しつこい和哉に怒り出す美雪。そこへ雅人が現れ、敵意もあらわに和哉とこのみに関わるなと告げる。 右:毎日美雪に声を掛ける和哉。その日も同じようにアプローチを掛けるが突然不可視の力に襲われる。それは美雪が恐れていた力、心を開けない理由。藤村兄妹の持つ超能力だった。 |
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中央:誰かを傷つけ、嫌われることを恐れていた美雪は、ある種の諦めと覚悟で必死に和也に謝る。しかし和哉は笑って許し、その代わり美雪とデートの約束を強引に取り付ける。 右:日曜日、半ば和哉のノリに流される勢いながら、美雪はデートの時間を過ごす。 |
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左:和哉と美雪をつけてきた雅人。同じく雅人の人を信じない様子に疑問を抱き、つけてきたこのみは、邪魔を企てる雅人を制止に入るが和哉とのことを聞かれ、「それだけあれば充分だ」、逆に雅人の企みに利用されてしまう。 右:和哉を待っていた美雪は現れた雅人に「和哉とこのみが恋人同士だ」と吹き込まれ、激しく動揺する。 |
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左:四人が対峙。「「俺を信じろ!」」和哉と雅人の板挟みになり、美雪は混乱から能力を発動させてしまう。不可視の力が周囲を襲い、三人とも吹き飛ばされる。 右:美雪が一番恐れていたこと…大切な誰かを傷つけること。それをしてしまった美雪は絶望から自身の心を破壊し、植物人間同然になってしまう。 |
和哉はまた、小さな鈴の音を聞いた。初めて出逢った時からずっと和哉の心に響いていた儚い音色。心の音。美雪の本心からの救いの声……和哉には確かにその微かな音色が聞こえていた。 自身もまた能力者であった和哉は、美雪の心を取り戻すため、彼女の深層意識に入り込む。 そこには一人、ぽつりとベンチに座る美雪がいた。 そう、最初見つけた時、あのひとりぼっちで日記を見つめていた時のように…… |
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Epilog.
美雪の心の中は真っ暗だった。
何もない、ただ暗いだけの静かな空間。リン…と響く本当に微かな鈴の音色を頼りに、和哉は美雪の居場所にたどり着く。
だがショックのあまり自暴自棄に陥る美雪を、和哉は本心からの想いからのありったけの言葉でなだめた。一生懸命な和哉の言葉に、次第に心を開き始める美雪。
和哉は言う。
美雪の心は真っ暗なわけではない、ここは夜空なのだと。この美雪の夜空には、輝く希望の星が必ずあるのだと。
帰ろう、と誘う和哉に、美雪はうなずいてさしのべられた手を取った。
見上げた夜空には、確かにそこにあって、煌々と輝く一つの星……希望の星。
美雪だけの、輝ける星があった。