「平成19年度 財団法人産業教育振興中央会 特別研究」
福祉施設の園芸福祉活動に関する意向調査(第一次)

                            岡山県立高松農業高等学校
                             教諭 三 宅  道 治

1 はじめに
 平成16年9月11日,来賓として来校された岡山県知事から直接筆者に言われた言葉がある。“園芸福祉で日本一を目指しましょう”である。この言葉を励みに取り組んできた。
 卒業生を含む園芸福祉士を中心にして,今年9月20日に『NPO法人岡山園芸福祉普及協会』が設立され,この組織とともに本校では園芸福祉活動の普及啓発に努めている。

2 目的
 高齢社会の中で,多くの福祉施設が新たに設立され活躍しているが,今後の取組や進路指導に活かすため,福祉施設の方々の『園芸福祉』に対する意向を調査する。

3 調査対象
 調査対象施設は,協議会等に加盟している県下のケアハウス37施設,デイサービスセンター140施設,知的障害83施設に限定して行うことにした。

4 調査期間
 平成19年5月〜6月

5 調査結果の概要
(紙面の都合で要点のみ)
(1)回収率
 発送数260のうち72施設から回答があり,全体の約3割弱の回収率であった。
(2)活動の内容及び運営管理者

  
 老人福祉施設では「花壇づくり」や「農園で野菜などの栽培」の実施率が高いのに対し,知的障害施設では草花苗や野菜・果樹の生産販売も約40〜50%の施設で行われていることがわかった。また,農園芸活動の運営管理者は,約85%が施設スタッフ,約9%がボランティアであった。
(3)もっと充実したい点
 もっと充実させたい点として,約66%の施設が「活動メニューの多彩化」,次に約44%の施設が「ボランティアの増員」を挙げている。
(4)研修会等への参加の意向
 園芸福祉セミナーへの参加の意向は,老人福祉施設全体では3分の1であるが,デイサービスセンターが52%と高い。
     6 まとめ
 今回の調査で,今後充実させたいものとして顕著であった「活動メニューの多彩化」や「ボランティアの増員」という結果からは,園芸作物の栽培管理だけでなく,その収穫物を活用した料理から園芸クラフトなどに至る系統だったプログラムの実施が可能となるような質の高いマンパワーが求められていると考えられる。また,農園芸活動の多くを施設スタッフが担っている現状を考えると,施設の中に園芸作物の栽培に長けているスタッフが居るか居ないかは大きな要素となる。
 以上から,園芸福祉の心得を持っている園芸技術のスペシャリストは,潜在的な需要があるものと判断した。研修会にも積極的に参加したいという施設も多く,農業高校のノウハウを活かせるものと考える。

7 人材育成にかかわる問題提起
 岐阜県園芸福祉サポーター養成講座等の例に習い,岡山県知事が認証する園芸福祉に関する独自の制度を設けたい。人材育成については,すでに初級園芸福祉士養成講座を行ってきており,この講座の運営についての支援及び認定試験の認証を岡山県に要請し,実現すれば,一般の方や高校生にも負担感が少なく人材育成ができると考える。



謝辞

 この報告書は,平成19年度,岡山県産業教育振興会会報116号の印刷原稿用に作成したです。この印刷原稿の作成につきまして,ご指導いただきました岡山県教育庁指導課の先生方にお礼申し上げます。

 今回の調査は,回答いただいた施設以外に,下記の団体や個人にご協力いただきましたので,記してお礼申し上げます。  
・社会福祉法人岡山県社会福祉協議会
・岡山県老人福祉施設協議会
・岡山県デイサービスセンター協議会
・社団法人岡山県知的障害者福祉協会
・社会福祉法人金曜会「わくわくワーク」
   安井直人氏、増田勵氏
・NPO法人日本園芸福祉普及協会
・NPO法人岡山園芸福祉普及協会
 なお、県下のケアハウス,デイサービスセンター,知的障害福祉施設,約400施設には正式な報告書を総会時にお渡しし,お礼します。




※詳しい情報が必要な方は,ご連絡ください。
 
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